古本と電子図書流通

2010年3月15日

今年まちがいなく大きな話題になるのは本格的な電子出版物流通だろう。キンドルは出ているし、すでにネットでは日本語対応ソフトまで流通している。
アメリカからネットでキンドル端末を購入し、それに日本語ソフトを導入して青空文庫を楽しんでいる人もでてきている。出版物のデジタル配信は新聞の配信のほかすこしづつではあるが広がっている。今年はキンドルが発売され、そのキンドルを使った新しいビジネスモデル、つまり通信料金をコンテンツ料金とバンドルしたアマゾンのサービスが動き始めている。
うわさでは、日本でのサービス開始は今年の10月ごろとか、、、既に友人の何人かはアメリカからネットでキンドルを買い、それにネットで手に入る日本語対応ソフトを導入し、既にサービスされている青空文庫からデジタル書籍をダウンロードして使い始めている。今年の後半にはiPadも登場してくる。キンドルは500ドル以下の価格帯、iPadは500ドルから上の価格帯でおもしろいすみわけになっている。
このアマゾンのサービスがきっかけでデジタル情報の有料配信サービスが始まるだろう。この最大のよい点は有料で配信するがゆえに原著作者に著作権料が支払われることである。
コンテンツを作り出す立場としては継続して作り出す、つまり再生産が可能なだけの収入は最低限必要である。デジタル配信のコンテンツからそのための著作権料が支払われることがはっきりすると、このところ議論が続いていたコンテンツのネット配信における著作権料に関する議論の一部も解決される。さて、そこでひとつ考えたことがある。
自分が電子図書配信をビジネスとして始めるとする。そのとき、その原料である電子図書あるいは出版物が必要である。まともに考えればその出版物の出版社と話し合ってそことデジタル配信に関する契約を取り交わし出版物の提供を受けてデジタル販売し、その売り上げから出版社に著作権料も含めた料金を支払うことになるだろう。ところが古本の世界を見てみよう。
古本屋は既に出版社から販売された出版物を中古品として買取、それを販売している。先にあげたブックオフの一冊105円の本がよい例である。そこで、自分としては出版社から出版物の提供を受けるのではなく、ブックオフから本を買ってくる。それをスキャンしてデジタル化し中古図書デジタル配信サービスなるビジネスをはじめるとする。
そのときの仕入れ価格は105円、スキャンしてデジタル配信対応に加工するのは自社のサービスのためのコストである。こんなことを考えると幾つか面白い疑問がわいてくる。そもそも古本についての著作権はどうなっているのか?
著作権は存在していてもいったん古本となって販売されるときは著作権料を支払われていないようだが、なぜ著作物を販売しても著作権料を払わなくてもよいのか?昨日ブックオフで105円で買ったジョージソロスの‘グローバル資本主義の危機‘という素晴らしい本は今日昼休みに丸善に行ったら1800円で売っていた。私の105円で買った同じタイトルの本もその小口を見る限りまったく読まれた形跡は無い。
本という著作物はその販売物体について一度だけ著作権料を支払えばよいのか?さて、今度はデジタル配信に関してである。105円で買った古本は既に著作権を支払う対象ではなくなっている。したがってそれを原材料とした古本デジタル配信では著作権料を払わなくてもよいのではないか?
あるいは払うとしても仕入原価である105円に対していくらか払えばよいのではないか?
もうひとつの疑問である。出版物の多くは再販制度が適用されている。
音楽CDの世界においても再販制度が適用されているがそれがデジタル配信になった段階では再販制度は適用されない。
多分出版物のデジタル配信においても再販制度は適用されないだろう。
もし、著作物として紙に印刷された内容とデジタル化され配信される内容が知的生産物
として同じであるときにデジタル配信されるほうには再販制度が適用されず紙に印刷され
た本については再販制度が適用されるのであればその再販制度の適用は知的生産物に対しての再販制度の適用ではなくて紙に対する再販制度の適用なのだろうか?
近くにあるブックオフの一階はすべてコミックである。あそこで片っ端からコミックを買って帰りそれをスキャンしてiMacの巨大なディスクにホームアーカイブを作っておき、iPadが販売されたらすぐにコミックデジタル配信サービスビジネスをはじめるとする。ブックオフで正当な対価を支払って購入したものをベースに行い配信するのである。
そのとき、個人利用ではない、と言う理由で無料配信は禁じられるだろうが格安有料配信を行いその仕入れ価格からはじいた著作権料を支払うようにすれば、今の一切著作権料を支払っていない古本屋よりも良心的なサービスといえないだろうか?

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