大学が教えること、学生が学ぶこと、企業が求めること

2011年11月25日

大学、学生、企業について前回の続きである。
この三つはあたかも相互関係があるがごとく、就職、あるいは就職率でつなげて論じられることが目立つ。
たしかに大学を出るとかなりの人が企業に就職する。だからといって大学は学生が卒業して就職する前工程であるわけではない。
なぜなら、大学には卒業したら企業に就職すること、などという条件は入学時に学生に課しているわけではないからだ。仕事に就く、あるいは働くということであれば義務教育を終えたら人はいつでも働ける状態にある。にもかかわらず高等学校に進学し、さらに大学に進学した後仕事に就く。そのように考えると実は大学に進むのは必ずしも仕事に就く前工程として進学するのではないと言える。
したがって大学で教えることは学生が就職するということと必ずしも結びつかねばならないということはなさそうである。大学卒業生の就職率が低いことと大学教育とを結びつけて議論することは必ずしも必要でなく、就職率はあくまで求人と求職の需給関係で決まって来るのであって大学の教育とはある意味で無関係であることをはっきり認識しておくべきだろう。そうでないと大学で教えることがあいまいになる。
企業は確かにコミュニケーションがきちんとできてチームワークもよくリーダーシップのある人材を求めているだろう。だからといってそれが大学の教育と一致しなければなら無い理由はどこにも無い。むしろ、これらの三つの要素が働くということで求められる基本素養であるならば中学を卒業するまでの義務教育の間に生徒にもたせるような教育をすべきだろう。
本来中学で学んで身に付けておくことが出来ていないからといって、大学で学ぶ4年間の時間を割いてその不足分を教育するのは大学として教えるべきことを犠牲にしていることになる。
大学は就職率などに惑わされること無く大学として何をどのようにして学生に学ばせるかについてさらに厳しく取り組むべきであろう。
自分は非常勤ではあるが大学で教える機会を得ている。担当している講座の講義の準備をしているとき、あるいは講義しているその瞬間にも自分は何を教えているのか、という疑問にぶつかることがある。教える機会を得てもう何年かになるが最近は講座のテーマを通じて考えるということ、考え方を教えたくて教えているのだ、と気がつき始めている。

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